私たちには遺したい町並みがあります
日本の美しい町並みを後世に遺そうという想いから始まった活動、フタツガミ。
その活動の一貫として新しく生まれ変わった建物が、東広島市の西条酒蔵通りにある「くぐり門珈琲店」です。
古くから伝わる最高峰の瓦の技術と、人々の熱い想いとかけ合わさり、今、広島を起点にどのようなストーリーが繰り広げられているのでしょうか。
今回は、弐神(フタツガミ)の活動についてと、その先駆けとなった「くぐり門珈琲店」をご紹介します。
失われつつある日本の美しい田園風景
年々、田んぼや古民家などの田園風景は、失われつつあります。
農村地域の人口減少と高齢化は著しく、山間地域においては2045年に2015年時の半数近くの人口が減少すると言われています。
住む人がいなくなった昔ながらの家屋
誰にも管理されず荒れ果てた農作地
老朽化が進み廃墟となった建物
放棄された水田や雑木林
かつては美しかった「ふるさと」の風景が、次々になくなろうとしているのです。
変わりゆくふるさとの田園風景を守るためには?
こうした現象を少しでも食い止めるためには、新しい建物をひたすら建てることではなく、既存の物に手を加えて再利用できるようにすることが必要です。
空き家をリフォームして再び住めるようにしたり、古民家を活用して商業施設などに建て替えたり。
そこには、「人々の想い」と古き良きものを「守る技術」が必要だと、私たちは考えました。
弐神(フタツガミ)とは?
弐神(フタツガミ)とは、日本に古くから伝わる最高峰の技術と町並み景観保持の観点から生まれた、新しい取り組みです。町並みの景観を作っているものの一つに、日本伝統の屋根で使われる「瓦」があります。
風情を残しつつ、美しい状態を長く保つには、高い技術が必要。耐久性とデザイン性に優れた瓦を追求した結果、誕生したのが弐神瓦(フタツガミ瓦)なのです。
町を大切に思う地元の人々や、日本の美しい田園風景に憧れて世界中から来る人々の「想い」を大切にしたい。
その先駆けとして、築80年の古民家を改修してできた西条酒蔵通りにある、くぐり門珈琲店が2012年6月にリニューアルオープンしました。
築80年の酒蔵から生まれた「くぐり門珈琲店」
西側(右)が「(社)東広島市観光協会」、東側(左)が「くぐり門珈琲店」
西条酒蔵通りにある「くぐり門珈琲店」は、2つの建物の屋根裏が繋がった、一見すると不思議なつくりになっています。くぐり門の下を通るとその先は広場のようになっていますが、かつては「芝居小屋 朝日座」があり、賑わいをみせていました。
そのため、町の人々からも「くぐり門」として親しまれていたそうです。
そのような歴史あるくぐり門も老朽化のため取り壊し寸前でしたが、「酒蔵通りの活性化や観光拠点として残す必要性がある」との判断から、市の補助金を受け改修工事が行われ、現在の姿となりました。
今では、酒蔵通りの名所となり、観光客の休憩所や地元民の憩いの場として親しまれています。
古き良きものに人の想いと手が加わったことで、再び人々に愛されるようになったのです。
酒蔵の仕込み水でいれられる、こだわりの一杯
くぐり門珈琲店のコーヒーは、西条の酒蔵の仕込み水でいれられています。
日本酒をつくるときに使われるお水は、「仕込み水」と言われ、成分の80%を占めるお水によって、お酒の仕上がりが大きく変わります。
日本酒と同様、地下からくみ上げられた純度の高いお水を使って淹れられるコーヒー。
いつもとは一味ちがった一杯を味わえるでしょう。
日本有数の酒どころ西条ならではのこだわりのコーヒーを、風情がただよう店内で堪能できます。
弐神(フタツガミ)が創り出す新たなる価値
日本の伝統ある町並みを遺したいという想いから始まった弐神(フタツガミ)。目指す先にあるのは、単なる景色ではありません。町並みは、地域の人々や観光客がいるからこそ生まれる1つの顔。
居心地の良い空間や、ホッとするひととき、うっとりするような美しさ、帰ってきたくなるような故郷の景観を守るためにも、弐神(フタツガミ)はこれからも受け継がれていきます。